【バイト 辞め方】
検索欄にそう入力し、スマホを手に持ったままベッドに転がる。ヒットした記事のひとつに、【辞める二週間前には、その旨を伝えること】【初日に辞めるのは言語道断】とあり、私は大きなため息をついて、掲げた手をスマホごとシーツに落とす。
あの後、会話が弾むわけはなく、気まずいまま央寺くんの仕事ぶりを見させてもらい、初日だからと店長に言われて午前中いっぱいで家に帰ってきた。
『明日もよろしくね。また央寺くんとレジに入ってもらうから』
そう言って握手してきた店長の顔が期待に満ちていて、結局、『辞めます』とは言えなかった。
でも、それでも……。
「央寺くんと一緒とか……無理」
両腕で顔を覆い、「無理無理」と何度も繰り返す。
思い返すのは、あの、中三の夏休み直前のこと。引っ越し前の、忘れもしない苦くてつらい記憶。