何か期待していた? 私なんかが特別扱いを受けているなんて思ってた? 頼子の“ロックオン”なんて言葉、ありえないと受け流しておきながら? 中学の時にフラれているのに?

 冷たい風は遮断されたはずなのに、私の気持ちは揺れ動き、そして冷えていく。

「姫野さん? あぁ、ごめんね、お疲れだよね。それじゃ今後もよろしく。来週もお願いね」
 
 店長の言葉に、
「はい、よろしくお願いします。お疲れさまでした」
そう小さな声を出して頭を下げ、スタッフルームを後にし、裏出口から外へ出る。

 一気に、周りの景色の色がくすんだ気がした。今日、明日美さんや店長から褒められて嬉しかったことも、どこかへいってしまった。