「あれ? 聞いていないかい? 央寺くんは数ヶ月前に辞める予定だったんだけど、ほかのスタッフふたりがその時期に突然立て続けに辞めてしまってね。申し訳ないけど、央寺くんにはもう少しいてくれって頼みこんで続けてもらってたんだ」

 店長は、腕組みをしながら、
「彼は有能だから、本当はずっと続けてほしかったんだけどねぇ」
 と残念そうにうなだれる。

 スタッフルームのわずかに開けられた窓から風が吹きこみ、ブラインドがカタカタと音を立てた。

「今年いっぱいって頼んでたんだけど、そんな時に姫野さんが入ってくれて。それで、同じ中学校だったってことだし、あれこれ教えてほしいって教育係を頼んで、もしひとりでレジに立てそうなくらい業務が身に着いたら、今月いっぱいで辞めてもいいよ、って言ってたんだ」

 風が細く吹きこむ音がして、冷たい風がスタッフルームに掛けられたカレンダーを揺らす。残り二枚となっているそれは、少し切なげにパタパタとはためいた。私は着替えた私服のパーカーの裾をぎゅっと握っていた。