「おう、姫野さん、お疲れ様。ちょっと話せるかな?」

 店長に呼び止められたのは、その日の帰り、着替えてロッカールームからスタッフルームへ出た時だった。明日美さんは一時間長いシフトだったので、私はひとりだった。

「頑張ってるね。昨日もお手柄だったし。さっき末浦さんからも聞いたんだけど、驚いてたよ。いろんなことをできるようになってきてる、って」

 目の前まで歩いてきて、優しく微笑む店長。

「あ……ありがとうございます」

 たしかに、明日美さん本人からも言われた。覚えるのが早いし、臨機応変な対応ができるようになってきていると。まだひとりでレジは任せられないと言ったけれど、撤回してもいいわ、とも。

 声の大きさと笑顔があと一歩だと、央寺くんと同じようなことを言われたけれど、それでも私は、褒められたことがとても嬉しかった。