「何をお願いしてるのか……聞いてもいい?」

 言ってから、しまったと後悔した。そんなの、もし自分が聞かれたら絶対に言いたくない。男の子のほうが、もしかしたらその気持ちは強いかもしれない。

「あー……」

 央寺くんは、案の定困ったような反応をして、また眉のあたりを擦った。もしかしたら、照れている時の癖なのだろうか。

「あ、やっぱり無理して言わなくて……」
「さっき、話した」
「え?」
「母親のこと」
「母親……」

すぐにピンときた私は、「あ」と声を出す。

「安産祈願だ!」
「……まぁ」

 目線をそらしながら、今度は鼻の頭を掻いて答える央寺くん。私はその願いごとが央寺くんらしいな、と思い、そしてそれがなんだかとても嬉しく思えて、自分のことじゃないのににやけてしまった。