「そういえばさ、うちの母さん、再婚したってとこまでは言ったじゃん」
「あぁ、うん」

 その話は、電話をしているときに聞いていた。中学の時は知らなかったけれど、央寺くんの両親は小学校の時に離婚していたらしい。そして、苗字はそのままで再婚したのが、一年前とのことだった。

 おじいちゃんのこともだけれど、央寺くんはけっこう家族のことを話題に出す。

「今、お腹にその赤ちゃんがいてさ、俺、十七歳離れた弟か妹ができる」
「ええっ!」

 自分の周りにはそこまで年の離れたきょうだいのいる人がいないので、純粋に驚いてしまう。もし今の自分に赤ちゃんの弟か妹ができたらなんて、想像ができない。

「高齢出産? てやつ」
「へぇ……すごいね」
「うん、ぜんぜん実感わかないけど、ちょっと腹出てきててビビる」

 央寺くんは、お漬物をいい音を立てて食べた。そして、咀嚼しながら「ふ」と微笑む。

「でも、バイト中、姫野が妊婦さんを見つけて、あんなにテキパキ動いて……驚いたのもだけど、ちょっと感動した」

 感動? そこまで言われると大げさなことのようで、
「え、いや……私も驚いたし慌てたし、無我夢中で」
 と、また頬を染めてしまう。