その時、店内の隅で同じところをウロウロしている五歳くらいの男の子に気付いた。不安そうな顔つきに、どうしたんだろうと思った私はすぐにレジカウンターを出て、その子のところへ向かう。
 
 そして、同じ目線までしゃがみこんで、
「どうしたの? 何かあった?」
 と話しかけた。

「お……お母さんがトイレから戻ってこないから、ずっと待ってるんだけど……」
「うん」

 その子は、とてもおどおどしていた。人見知りなのか、視線を合わせずたどたどしく説明する。

「ト……トイレに迎えに行こうと思っても、ば、場所がわからなくて、僕……」

 けれども、トイレのマークは斜め上に吊るされた案内ボードに大きく書かれていた。そして、その子は話しながら何回かちらちらとそれを見ている。

「そっか。じゃあ、お姉ちゃんと一緒に行こう」

 私はその子の手を引いて、トイレへと案内することにした。店内のトイレへは、ホラー映画コーナーを抜けないと行けないようになっている。そのことに気付いた私は、今日店長にこのことを話してみようかな、とふと思う。