こんな短期間で人って変われるんだな、と驚き感心すると同時に、やはり嬉しくもあった。
 将棋も、央寺くんが強いからかメキメキ上達している気がする。なにより本で学んだことを実践するのが楽しくて、夜の対局が毎日待ち遠しかった。

「…………」

 台を拭いたり、返却ポストに入っていたDVDやCDを棚に戻したりしている央寺くんを、私はカウンターの棚の整頓をしながらちらりと盗み見る。

 ちょっとだけ引っかかったのは、央寺くんがコンタクト姿の私を見て、“可愛いね”とまではいかなくても、“似合うね”とか“いいね”さえも言ってくれなかったことだ。

 べつに期待していたわけじゃない。……いや、多少はあったかもしれない。でもそれは、央寺くんに限ったことじゃない。褒められたら誰だって嬉しい。それでも、毎日話している央寺くんだからこそ、もうちょっとリアクションが欲しかったかもしれない。



 開店し、昼休憩まで途切れないお客さんの対応をする。週末だけのバイトだから、まだ合計七、八回しかやっていないけれど、央寺くんの指導とマニュアルのおかげでだいぶ慣れてきた。

 休憩時間は、ちょうどお昼時に混雑したため、二時くらいになった。央寺くんに先に休憩を取れと言われた私は、急いでお弁当をかきこみ、歯磨きを済ませる。