「てか、理穂ちゃん、好きな人いないの?」
「いないいない」
 
美月は、「秘密主義なんだから、もう」と頬を膨らませる。

廊下を数人の女子たちが固まって歩いていくのが見え、大きな笑い声が通り過ぎていった。

私はその声が遠くなってから、
「そっちこそだよ。美月、モテるのに、なんで彼氏作んないの? 想い人がいるの?」
と話を広げる。

「いないよー。それに、モテるって言っても、タイプじゃない人からばっかりなんだもん」
「贅沢だなぁ。イケメンハンターは」
「違うってばー。目の保養と実際の恋心はちゃんと分けてるもん」
 
その時だった。
廊下を偶然通った相良くんが目に入り、窓越しの彼が自然にこちらへ手を振ってきたのは。