「ねー、理穂ちゃん。今日、一緒に帰らない? 習い事ない日だよね? 新しくオープンした雑貨屋に付き合ってほしいんだけど」
 
美月が帰りのホームルーム後に、お願いポーズをしながらそう言ってきたのは、木曜日だった。

「あー……っと、ごめん、今日も日誌を書いて、先生に持っていかないといけなくて」
 
本当はすぐに終わるのだけれど、副委員長の仕事があるからという理由でやんわり断る。
旧音楽室へ通うようになってからは、これで通してきた。

「待ってるよ。駅の近くだから理穂ちゃんの帰り道だし、たまには寄り道しちゃおうよ」
「……うーん」
 
どうしようかな。
そう思案しながら日誌に目を落としていると、美月は「大変だよねー、毎日」と言って、私の前の席に座って横向きに話しかけ始める。