子どもみたいだ。
嬉しさを体現して分かち合おうとするのは分かるけれど、男の子に対する免疫のない私は、相良くん相手でも戸惑ってしまう。

彼は「ごめんごめん」と言って、ようやく体を離してくれた。

「でも、サンキュー。もう一回、いい?」
「えっ、だからダメだよ。セクハラだってば」
「ちげーよ。ハノンだよ」
 
軽くデコピンされた私は、気恥ずかしさを咳払いで誤魔化して、「わかったよ」とぶっきらぼうに言った。

結局その日は、四回もつき合わされて演奏した。