途中、ゆっくりすぎてリズムがよくわからなくなったけれど、なぜか相良くんのほうが合わせてくれる感じで追いついたり追いつかせたり。

まだ一ヶ月足らずなのにこんなふうに弾けるようになって、私は心底感心した。
 
あ、意外と指長いんだ。
 
相良くんの左手をよくよく見たことがなかった私は、一緒に弾いてみて改めて男の子の手だな、と思った。
大きくて、筋張っていて……私もこんな手だったら、もっといろんな曲を楽に弾けたかもしれない。

「ちょっ、速い。速すぎるよ、ウサギ」
「え? ごめん」
 
気付けばいつもの自分のリズムに近くなってしまっていた。