「あーーー、いてぇ。二日前の筋肉痛がまだ残ってる」
「体育祭の?」
「うん。リレーで隣とほぼ同時にバトン渡されたもんだから、負けるか、って百パー以上の力を出しちまった」
 
一週間後、体育祭の振替休日の翌日の火曜日。
ソファーに座りながら右足のふくらはぎを撫でている相良くんを見ながら、私はほんの少し伸びてきた髪を結んだ。

「あぁ、追い越してたよね、あの時。けっこう足速いんだね、相良くん」
「ウサギは遅かったな。名前負けしてんじゃん」
「だから宇崎だってば」
 
ツッコむのも面倒だ。私はニヤニヤしている相良くんに、
「じゃあ、練習するから」
とそっけなく言って、ピアノ椅子に座る。