そう返したものの、こういう言い方をされると、私はいつも複雑な気持ちになる。

お父さんは私が一番になれなくてもべつに怒りはしないし、頑張れよ、と応援してくれる。
なにも問題ないはずなのに、それなのに、なんか……。

「どの教科が難しかったの? 理穂ちゃんは」
 
ふいにお母さんに声をかけられて我に返った私は、「あー……今回は、数学」と返す。

「数学かぁ。お母さんも苦手だったわー」
「お父さんは得意だったぞ」
「あら、お父さんはなんでもできてすばらしいわぁ」
 
お母さんお得意のプチ拍手で、お父さんは自分の学歴の話から武勇伝まで得意げに話し出す。

お父さんもお母さんも仲がよくて、とてもいいことだと思う。
でも、この流れにはさすがに飽食気味の私は、食べ終えたお皿を重ね、「ごちそうさま」と言ってお皿をシンクに運んだ。