「相良くんて、不思議な人だね」
「あ?」
「耳がめちゃくちゃいいし、調律できるし、正体不明な転校生なのにすぐ周りと仲よくなるし」
「正体不明って……。ウサギが聞かないだけだろ。俺は聞かれたらなんでも答えるよ」

「そうなの?」と言いながらも、さすがに急に踏み込んで聞く勇気はない。
だって、この前、転校理由を聞いて失敗しているからだ。

「それに、それを言うなら、ウサギもだろ。優等生なのに、男の子と部屋でふたりきりで、しかもソファーに隣同士で座ってる」
 
な、とわざと作ったイケメン顔で言われて、私は思わず噴き出してしまった。

なぜだろうか、ピアノが下手で、でも一生懸命に弾く彼を見てから、恋愛感情とはまったく違う方向の親近感がわいて、そういう対象として意識ができない。