「コンクールでの実績、いる?」
「いや、たぶんいらないだろうけど……」
 
相良くんと話していると、なんだかよくわからなくなってきた。
だって、そう言われたら、ピアノに限らず、みんながしている習い事すべてを否定してしまっているじゃないか。

「ていうかさ、あれだよ。自分が積み上げてきたものを発表して結果を残したら、達成感も大きいし、経験値も上がるし、成長ができるからだよ。勉強と一緒で」
 
模範解答をようやく思い出した私は、人差し指を立てて大きく頷いた。

「達成感……ねぇ」
 
相良くんは起き上がって、頭をガシガシとかいた。
あまり納得がいっていないように見えるけれど、次の瞬間、「あっ、そういえばさ」と、私の人差し指を見ながら同じく指をさす。

「なんで“しーっ”なんだよ? 俺と知り合いだと困るわけ?」