私は振り返らないままで、
「なんでもない」
と答えた。

「なんでもなくはないだろ。そんな、かまってオーラを出して」
「出してないわよ。一緒の空間にいるからそう思うだけで」
 
そう言うと、相良くんの呆れたようなため息が聞こえる。

「音にも出てたよ、途中から」
 
音にも? 

相良くんの言葉が引っかかって、私はようやく彼の方を見る。
予想どおり、仰向きに寝転がって足を組んでいる彼は、スマホをいじっていた。

「リズムが一定じゃなくて、集中できてないって感じが出てたってこと?」
「いや、それ以上に、“面白くなーい”とか“うまくいかなーい”って感じ?」
 
おちゃらけながら言われて、私は「なにそれ」と返す。

「まぁ、表面的過ぎるのよりは、聞いてるぶんには面白いけど」