「あっちぃー。できるならこのままで教室戻りたいわ」
 
反対隣で着替えていたのは尚美。
タンクトップ姿で制汗スプレーをこれでもかというくらい背中に噴きつけている。

「ふふ、尚ちゃんなら違和感なさそう」
 
クスクス笑う美月の奥で、「こらこら」を呆れるようにツッコむのは彩佳。

そんな話をしながら着替えを終えた私たちは、更衣室から教室へと戻るべく、渡り廊下を校舎のほうへ歩いていく。

「あ。見て見て、ほらあの人、転校生の……えーっと……」
 
途中、数メートル前方のトイレから2人の男子が出てきたのを見て、美月が小声で私たちに目配せする。

「…………」
 
後ろ姿で気付いたけれど、なにも言わなかった私の横で、彩佳が、
「相良くん?」
と同じ音量で言った。