「やだぁ、ツケマとれちゃった」
月曜日。
体育祭の練習を終えてグラウンドから更衣室へ戻ると、タオルで汗を拭いた美月が「最悪だし」とぼやいている。
美月はオシャレできるところはすべてオシャレするというのがモットーで、先生の目をかいくぐっては、化粧や爪や髪にと努力を惜しまない子だ。
「だから、美月はそのままでも十分可愛いって」
「うーん……そう? 理穂ちゃんがそう言うなら、今日のところは両方取ってマスカラにしとこうかな」
美月は口を尖らせながら、私には無縁のつけまつげを器用に剥がす。
美月はもともと顔が整っているから、本当に化粧しなくても可愛いのだ。
だから、そんなにいろいろする必要があるのかと、いつも理解ができない。