そのことに対する驚きと同時に、益川先生ってあんなふうに感情的に人を褒めることがあるんだ、という……驚きとは別の、なんともいえないような鬱屈とした気持ちが生じた。
 
階段を下りきって外へ出ると、小雨がすでに道路を濡らしている。

私は傘を差し、早歩きで駅に向かった。
白と紺の細いボーダーのこの傘はお気に入りだけれど、テンションは上がらない。

「人は人」
 
世の中にはいろんな人がいる。
神童と言われている子もいれば、努力なしのセンスだけでやってのけられる人もいるのだろう。

ふうっと大きく深呼吸をすれば、いくぶん落ち着いた頭が、そんなことはわかっている、と自分自身に伝える。