翌々日、実力考査も終わり、副委員長の仕事である日誌を書いた後で、私はさっそく旧総合棟へと向かった。

旧美術室と旧家庭科室の前を通り過ぎて階段をのぼり、2階の旧音楽室の前に立つ。

1年の時から選択教科は音楽を選んでいたので、さほど懐かしさは感じない。
磨りガラスでできた廊下とを隔てる窓と入口のドアからは中はぼんやりとしか見えないけれど、私は、そういえば雑然としてるって先生が言っていたな、と思い出しながら、軋んだドアを横に引いて開ける。

「……あぁ、ホントだ」

1学期まで使用していたのだから、まだ室内はキレイなほうだったけれど、2階部分の各部屋から集められた椅子や机や棚が、もともと生徒が座っていたスペースに寄せて並べられており、先生たちが使っていたものだろうか、なぜかソファーも端のほうに置かれていた。

少し埃っぽい匂いが充満していたから、窓を開け、空気の入れ替えをする。
すぐそばに植えられているちょうど2階部分と同じ高さの大きな木は、夏休み前よりも葉がだいぶ生い茂り、それが西日を防いで陰にしてくれていた。

葉がこすれ合って揺れる音がザアッと響けば、大きな窓からはとても気持ちのいい風が入ってくる。
まだ暑さの残る9月、この棟には空調設備がないけれど、それでも涼しく感じることができた。