衝撃を受けたままで最後まで聴き終えてしまった私は、奥から聞こえる大きな拍手で我に返る。

「すごいわ。すばらしい! 感動しちゃったわ、先生」
 
そこで私は、益川先生が弾いているのかもしれない、という予想を裏切られる。

「中3でここまで弾ける子なんて、なかなかいないもの」
 
女の子の小さな声で、「そんなことないですよ」と聞こえる。

私はショックのコンボに開いた口がふさがらなかった。
一歩後ずさってドアに踵があたった私は、すぐ横にあった傘立てから自分のものを取り、音を立てないように外へ出る。

「…………」
 
あんな音を、中学生が……?