「…………」
 
そう思いながら園宮くんの顔が頭に浮かんで勝手に顔が熱くなり、動揺を落ち着かせるように努めてピアノに集中した。

正しく、正確に、間違えないように。
それがコンクールの基本だ。
精神統一と集中力が第一だ。
 



気付くと、バスの時間だろうか、相良くんが音楽室のドアのところに寄りかかってこちらを見ていた。

集中することに集中していた私は、ハッとして、
「あっ、バイバイ」
と挨拶する。

前回も前々回も、一応人として挨拶は欠かしていなかった。

「あのさ」
 
けれども、腕組みをして寄りかかっている彼は、そう言って頭をコツリと戸当たりにあてる。

「なに?」