「ちゃんとやりがい感じてるよ、一応」
 
べつにまだ知り合って間もない相良くんにわかってもらおうとは思っていなかった。

けれども、この旧音楽室の居心地の良さからだろうか。私は、
「勉強もピアノも、やればやっただけ、ちゃんと自分の身につくし結果につながるもの。ただ、その積み重ねが私にとっては苦じゃなかっただけ」
と続けた。

「それに、それを自分以外に喜んでくれる人がいて、それが自信につながって、相乗効果になる。だから、私は優等生って言われても、ありがたくそれは褒め言葉として受け取ることにするから」
 
相良くんは天井を見つめたまま動かなかった。

それどころか、
「あ、ラインきた」
と言って、手の中で振動したスマホを持ち上げて操作しだす。