すると、ちょうど廊下側の窓に寄りかかっていた男子生徒が振り向き、偶然目が合った。
そこは、2年3組の教室だった。

「…………」
 
ガラス1枚隔てた向こうから相良くんがこっちを凝視し、面白いものを見た、とでもいうような顔で口の端を上げた。
私は見なかったことにして、無言で視線を正面へと戻す。

「弓道部のみんなも、癒される、って言ってる」
 
続いていた会話に、私は気を取り直して、
「本当に?」
と笑って前下がりの横髪を耳にかける。

「本当」
 
園宮くんは今日もいっさい微笑んだりはしなかったけれど、私はその言葉に温かさを感じて、やっぱり嬉しくなった。