職員室に着くまでに、各教科の点数比べとか、ひっかけ問題のアレできた? とか、静かに盛り上がる。
共通の話題がそれしかない私にとって、テストの答案返却と順位が出たタイミングは逃せなかった。

「ピアノ、以前の音楽室から聞こえてくるけど、あれ、宇崎さんでしょ? 松野先生と話してたし」
 
そんな園宮くんが、職員室を出てから教室へ戻る途中、テスト以外の話題を振ってきた。

私は少し照れくささを感じながら、
「うん、そうだけど……うるさい?」
と聞いてみる。

「いや、いつも感心しながら聞いてる。上手だから」
「ハハ」

素直に嬉しかったけれど、私はそれを前面には出さずに、横切る教室の中へと視線を逸らす。