「あぁ、そうだ。宇崎さん」
「はい」
「夏休み前に言ってたピアノ使用の件、大丈夫だったよ。校長先生にも他の先生たちにも言ってあるよ」
「本当ですか?」
 
嬉しさを顔に表した私に目尻にシワを寄せた松野先生は、腕組みをしながらこくこく頷く。

「あぁ、吹奏楽部は新しい音楽室を使うし、旧総合棟の取り壊しももう少し先になるらしい。だから2学期の間は自由に使えばいいよ。鍵は開けっ放しだからしなくていいし、掃除も気になればするくらいで。あ、でも、物置みたいになっていて雑然としてるようだが集中できるかな?」
「はい。大丈夫です。本当にありがとうございます」
 
深々と頭を下げると、先生に、
「ハハ。宇崎さんの頼みなら断れないからねぇ。頑張ってね」
と肩をポンポンと叩かれた。

私はもう一度お辞儀をして、ドア付近で待ってくれていた園宮くんのところへと急いだ。

「ピアノ?」
「そう、うちのピアノで練習してたんだけど、隣の家に赤ちゃんが生まれて、防音じゃないから、お昼寝できないとか泣いちゃうとか苦情がきちゃって。秋のコンクールが近いから、もし可能なら放課後の時間だけ旧音楽室のピアノ使わせてもらえないですか? って先生に打診してたの」
「なるほど」