ちょうど三番まで弾いたところで手を止めた相良くん。
ドカッと私の横に座り、ポロロロンと、右手を鍵盤に走らせる。

「それで気付いた。好きなのかなーって」
 
私は、相良くんが左手も鍵盤に置いたから、邪魔しないように体を横にずらす。
そしたら、とてもゆっくりなサティが始まった。
 
一緒だ、と思った。
私も、相良くんと一緒に話したり笑い合ったりしている美月を見て、いやな気持ちになったんだった。
 
相良くんのサティはとても聴き心地がよくて、心にじんわりと響いてくる。
私が自暴自棄な気持ちになっていた時もそうだった。
ゆっくりとじっくりと解くように、私の心を落ち着かせてくれた。

いつの間にか左手だけの音になり、俯いて目を閉じながら音楽に浸っていた私は、彼が私の顔を覗き込んでいたことに気付く。