照れてピアノに戻した顔。
そのままテンポよくジングルベルの曲を弾き始めると、相良くんがハハッと笑う声が聞こえた。

「髪、伸びたね」
 
ふいに横から鍵盤に伸びてきた右手。
いつの間にか背後に立っていた相良くんが、私のピアノにアレンジを入れて入ってくる。
さすがのテクニックで、単調なジングルベルが豪華な響きになる。

「そりゃあ……初めて会ってから、もう三ヶ月近く経つんだから」
 
私はちょっとミスをしながらも、慌てて指を動かし、そう答える。

「伸びたら、もうウサギじゃないね」
「そうだね」
「じゃあ、“理穂子”で」
 
またリズムが乱れると、間近にある頭で軽く横頭突きをされる。

そして「ブハッ」と笑われ、
「ホント、正直っていうか、音に出る女」
と言われた。

「うるさいよ」と言って頭突きを仕返すと、また音がぶれた。