「自己陶酔してたね」
 
弾き終え、ふぅ、と息を吐いて微笑んでいた私は、いつの間にか入口に立っていた相良くんに驚いた。
彼は中に入ってきて、バッグをソファーに放り、その横に腰かける。

「いつ来たの?」
「今。一階からここに来るまでずっと聴いてた」
「音でわかるの?」
「わかるよ。なんて素敵な曲で、その曲を弾いてる自分もなんて素晴らしいんだろう、っていう音だった」
 
相変わらず悪趣味で、嫌味だ。相良くんは意地悪な顔で微笑んでいる。

「でも、そのほうが好きだけど」
「へぇー」
「音楽も、ウサギも」
「……ふーん」