旧音楽室に、今日はラヴェルのソナチネが響く。
この前相良くんと一緒に弾いて、こんなに素敵な曲だっただろうかと思えた曲だ。

以前断念してそのままだったその曲を、再度ひとりで弾けるように練習することにした。
コンクールはしばらくないし、来年は受験生になる。
だから、今のうちに、自分の好きな曲を好きなように弾けるようになりたい。
 
寒さもあってか、指がかじかんでいて思うような音が出せず、一回弾き終えた私は、指を手で包んで温かい息を吹きかけた後で、再度弾いてみた。
 
目を閉じて、音の伸びやかさを感じてみる。

私が鍵盤を押すことでハンマーが弦を打ち、ピアノ自体に音を振動させて伝えれば、自分もまるで楽器になったみたいに反響して、体が自然と動いた。
こんな、指と鍵盤との境界線があやふやになるような感覚は久しぶりだ。