「なーんかさ、ちょっとだけ、そんな気がしてた」
「え?」
「理穂子が夏休み明けに、こんな男子知らない? って聞いてきた時から」
 
私は、「そういえば、そんなことあったね」と言って、照れ隠しで冷たい手をすり合わせ、渡り廊下の屋根の奥に見える空を見上げながら「寒いなぁ」と言った。

彩佳は、噴き出して、背中をポンと軽く叩く。

「よかったね」
 
まるで自分のことのように微笑む彩佳。

私もその顔を見て、
「うん」
と返し、足元に目を落としながら微笑んだ。