「そうなんだ」
「……そうなんです」
 
翌日、体育から校舎へと戻る途中、白い息を吐きながら一部始終を彩佳に話し終えた私は、赤くなった鼻頭を掻く。

「美月と尚美には言ったの?」
「付き合い始めたってことだけ言おうかな。明日」
「ハハ、今日じゃなくて明日なんだ」
 
クスクスと笑う彩佳に、私は、
「こういう話するの、めちゃくちゃ照れくさいんだもん」
と口を尖らせる。

「おーい」
 
はしゃぎながら走って渡り廊下を先に行ってしまった美月と尚美が、いつの間にか三階の教室の窓から顔を出し、ぶんぶんとこっちに手を振っている。
私と彩佳はそれに手を振り返して、「早っ」と笑い合った。