「相良くんはどこから転校してきたの?」
「関東」
「引っ越しは、お父さんの転勤で?」
「いや、離婚で」
「…………へぇ」
 
しまった、迂闊だった。気軽に聞くべきではなかった。
そこでいったん話題の舵取りができなくなり、私は横に向けていた体を鍵盤のほうへゆっくりと戻した。

「宇崎って……」
 
けれども、相良くんがなぜかまた吹き出したことで、また横顔だけで振り返る。
彼は肩を揺らしながら、私を見ていた。

「その長さで髪括るの、変じゃない? それこそ」
「なに?」
「ウサギ?」
 
そう言った途端に、「ぶはっ」と自ら笑う相良くん。
いや、そんなに面白くないんだけど。