「……バカ?」
「え?」
「あいつが言ってた久世さんて、わがままでどうしても転校したくないっつって父親とそのまま暮らしてる、俺の双子の妹。俺は母親についてきたから、旧姓の相良になったけど、もともとは久世彰浩」
「……は?」
「彼女とか、存在しないんだけど」
 
目が点になるとは、こういうことだろうか。
私はあんぐりと口を開けたままで、うなだれて横目でこちらを冷ややかに見ている相良くんと視線を合わせる。

「ハハ……」
「笑って誤魔化すなよ」
「アハハ」
 
私は思い切り笑ってしまって、顔を手で覆った。

勘違いさせるような言い方をした相良くんも悪いけど、ちゃんと確認しなかった私が一番悪い。本当になにをやっているんだ。
 
でも……でも……。