「じゃあ、キスしていい?」
「えっ? ダメだよ」
「なんで?」
「なんでって……」
「さっきも拒んだ」
「だから……」
 
説明するよりも前に、ガタンッとピアノ椅子が音を立てた。

二の腕をつかまれて引きずり下ろされるように相良くんに寄せられた体は、彼の膝に半分のっかってしまう。
右手でふたり分の体重を支えた相良くんに、不安定な体勢の私の背中はぎゅっと左腕で包まれた。

「ちょっ……相良くん」
 
少し腰を引いて彼の膝から体をずらすと、逃げられないように今度は両腕で捕まえられて抱きしめられる。

「好きになってよ、俺のこと」