「音楽が楽しいってことを共有したい」
「うん」
「やらされてるとか、やらないといけない、じゃなくて、……ちゃんと、やりたい、って思いたい」
 
窓の外へ向けていた顔を俯けてこちらへひねり、私のハラハラと落ちる涙を見る相良くん。

そして、
「同じだね」
と言った。

「そう思えたから、単純に弾きたいって思ったから、弾いた。また始めようって思えた」
 
続けて話し出して、相良くんは翻した体をこちらへ向け、窓を背にして桟に寄りかかった。

腕組みをしていつもの笑顔。
でも、それがだいぶ大人びて見えるのは、こんな話を聞いたからだろうか。