そしたらそれを許さないようにうなじに手を回されて固定されたから、私はふいに右手の甲で自分の唇を隠した。
 
だって、自分が相良くんの彼女だったら、引っ越した先の高校で、他の女の子にそんなことをしてほしくない。
この前は不意打ちだったから防ぎようがなかったけれど、今日はもう……。
 
そう思ったら、なんだか喉元が熱くなって、鼻の奥に痛みを感じた。
近付きたい気持ちと、それに相反する感情がせめぎ合って、苦しい。
 
相良くんはそんな私を見て、そっと手を離した。
彼の気配が目の前から消えて、カタ……と音がしたことで、立ち上がって窓際に移動したことに気付く。
 
唇を覆っていた手を下ろし、私は相良くんを見る。
彼は窓を背に、やっぱり薄く笑いながら私を見ていた。