川の流れのような音の連なりに、私は相良くんと過ごした放課後を思い返す。

そういえば、一緒に弾くのは本当に楽しかった。
相良くんが嬉しそうにしていて、私もそれが伝染したかのようにテンションが上がった。
 
勉強でも、ピアノでも、今まで順調だったものがそうはいかなくなって、今までに感じたことのないドロドロした気持ちも経験して、その時々に、私は彼に心の内を吐露していたな。
 
なんでだろうか、この同じ空間で一緒に時間を過ごすうちに、まるで心も共有しているような気持ちになっていたのかもしれない。
 
ハープのような音色が、自分自身に響いて呼応する。
自然に小さくも育まれていた気持ちが、指先から音を奏でながら流れ出てくる。
 
私は、相良くんにわかってもらいたかったのかもしれない。
私の、私でさえ持て余していた心の殻を突いてくる彼に、その殻を破って薄皮をめくり、本当の自分の肩を叩いてほしかったのかもしれない。