相良くんに会ったのは、夏休み明けの暑い日だった。
それから瞬く間に仲よくなって、一緒にいろんな話をして、ピアノを弾いて……。
 
あの日々はなんだったんだろう。
そして、あのキスは……。
 
もしかしたら、私は彼の過去を掘り起こすべきじゃなかったのかもしれない。
もう、彼は……ピアノを弾きたくなくなったのかもしれない。

「よ、理穂子。なに妙な顔してんの?」
 
その時、尚美が後ろから背中を叩き、私の顔を覗き込んできた。
私の周りは、私を全然ほっといてくれない。

「あ、もしかして、さっき返された期末の成績、悪かったとか?」
「え? ……あ、あぁ……」
「何位だった? ちなみに私、八十九位」