「て聞いたら、同情する? ウサギ」
「え?」
 
ちょうど終わった平均律。
相良くんは、右手は鍵盤に置いたままで、体をこちら側にゆっくりとひねった。

彼の目を間近で見たことで、私は口を半分開けたまま固まる。
そしたら、相良くんはお得意のニッとした笑い顔を見せた。

「かわいそうでしょ?」
「…………」
「だから、させてくれる?」
「……なにを?」
「キス」
 
そう言って、私の返事を待たないまま静かに顔を近付けてきて、そっと唇を重ねる。