気だるそうに天井を見上げながら話す相良くんに、私は「いやだよ」と返した。
話しながら、どんどんどんどん重たい気持ちになっていく。
 
相良くんは意地悪なことを言って、うろたえる私を面白がっているんだ。
やっぱりからかわれているんだと再確認する。

「相良くん」
 
私は、ピアノのほうへ向き直って、鍵盤蓋をゆっくり開けた。
そして、椅子の端に体をずらして、右側を空ける。

「こっちに来て、隣に座って」
 
背中を向けたままでそう言った私は、髪をひとつに結う。
ほんの少しの静寂の後、背後でソファーが小さな音を立てたのを聞いた。