美月がいなくなった旧音楽室は、まるでお客さんがいなくなった自分の家みたいに、すっと落ち着いた空気の流れになったようだった。
入口のドアのところにたたずんで廊下を見ていた私は、視線を部屋の中に戻して相良くんを見る。

「ハハ。なにその険しい顔」
 
先に口を開いたのは、相良くんだった。

「委員長を見に来た笠間ちゃんが、そんなにいやだった? 告白されたって、実はウサギも初耳だったとか?」
「知ってたよ」
「あらら」
 
相良くんは「不憫だねー」と茶化しながら、顎を上げてソファーの背の上に頭をかけた。

私は久しぶりにこの部屋に足を踏み入れて、ピアノ椅子のところまで歩く。
壁に寄せてバッグを置いて、ピアノを背に、相良くんのほうを向いて座る。