「え? なんで?」
「察して?」
 
美月の問いに、にっこりと微笑む相良くん。
美月は数秒固まった後で、「あ……あぁ」と頷いた。
今、明らかな誤解が生じたのを見た。

「ちが……」
「じゃあね、理穂ちゃん」
 
勘違いを加速させて、美月は慌てた様子でバッグを肩にかけ、入口の私のところまできて、肩に手を置いた。

「告白だったら教えてね」
 
そして、そう耳打ちをしてから、「相良くんも、バイバイ」と手を振って出ていった。
磨りガラスの奥、小走りで廊下を駆けて消えていく、ぼやけた彼女の影。