「ていうか、弓道部が見られるっていうのもだけど、この部屋、すごくいいね、理穂ちゃん。ソファーもあるし、ピアノもあるし、木に囲まれてて外からはあんまり見えないし、旧棟だから人も寄りつかないし。なんだか秘密の隠れ家みたい」
 
うん、と返したつもりでも、ちゃんとした声にならない。

「相良くんも理穂ちゃんも、知ってたなら教えてくれたらよかったのに」
「園宮くんは遅くなるよ」
 
美月の話を切って、思わず私はそう言っていた。
自分が思った以上に強張った声が出た。

「え?」
「先生に用事頼まれてて、部活遅れるんだって。さっき話した」
「そうなんだ」
 
ふーん、と頷いた美月は、相良くんに目配せして、その後で私の目もちらりと窺う。