「あれ? なんで理穂ちゃんがここに?」
 
まったく同じ疑問を先に美月から投げかけられ、私は開きかけた口を思わず閉じた。
そして、信じられないほどショックを受けている自分を自覚する。
 
この音楽室は、私と相良くんだけの……特別な……ふたりだけの空間だったはずなのに……。

「や……ちょっと……用事があって……」
 
あまりにもぼかした理由に、美月は首を傾げた。

けれど深く追及はせずに、「そーなんだ」と言ったから、今度は私が、
「美月は?」
と聞き返す。
ふたりに気取られたかはわからないけれど、声が若干震えていた。

「私はね、ふふ、ここって弓道場がよく見えるって、文化祭前の看板作りの時に知って、それで上からこっそり見学に来たの」