久しぶりに旧総合棟に入り、美術室の前を通り過ぎ、階段をのぼる。
ここまで小走りで来たからか少し息が上がってしまった私は、階段の踊り場でいったん手すりを握ったままで息を整えた。
 
相良くんはいるだろうか。
ピアノの音は聞こえてこないし、もしかしたらいないのかもしれない。
それでもと、私はまたゆっくりと足を踏み出し、階段をのぼり始める。
 
その時だった。
二階から、女の子の笑い声がわずかに響いて聞こえたのは。

「……え?」
 
聞き間違いかと思いながら、二階に着いた私は、旧音楽室の開いたドアまで近付く。

「ホントいい場所。穴場だね、ここ」