それから、先生はうっとりしたように説明し始めた。

「あれはね、二年前の東京であったコンクールで、えーと、だから彼が中三の頃のね。あ、ということは、理穂ちゃんと同い年だわ」
「……ですね」
「そのコンクール、わりとそれぞれレベルが高かったんだけど、彼の登場でみんながもう本当に霞んじゃって霞んじゃって」
 
私もDVDを見てそう思った。

「あんまりよくは知らないんだけど、小さい時からお父さんの勧めでピアノを習い始めたらしくて、小学校の時からコンクールというコンクールで賞を取って、それこそ世界に出ていくピアニストの卵だって、神童だって言われてたらしいわ」