「あ」
 
月曜日の放課後、日誌を書き終え、急いで旧音楽室へと向かった私は、そんな私よりも早く着いてソファーに寝転がっている彼を見つけた。

部屋すべての窓が開け放たれていてカーテンがあちらこちらでヒラヒラ踊っている中、転校生の彼の体の上に、外からの木々のまだらな影が揺れている。

寝ているのだろうか、スマホを持ったままお腹の上に乗せ、目を閉じていた。

「あの」
 
歩み寄って覗きこみながら声をかけると、彼の目がパッと開く。

ぱっちり吊り目が私の姿を捉えると、彼は、
「あ、来た。薄情者」
と口を歪めた。