「え?」
 
そのままするりと相良くんの横を抜け、引っ張られるようにどんどん進む。
私は、呆気に取られたままで、彼の後をついていった。

「大丈夫?」
 
角を曲がると、園宮くんが振り返り、いつもの無表情で聞いてきた。

「あれ? 先生に呼び出されたって……」
「嘘。ちょっと困ってるっぽかったから、宇崎さん」
「……え」
 
驚いた。
腕を引かれたこともだけれど、そんな嘘をついてまで助け舟を出してくれるなんて、イメージがなかったからだ。

彼は、とりあえず下の階のトイレに行こうか、と言って、階段を下り始めたから、私もそれに続く。
階段は、ちょうど誰も人がいなかった。